次期社長の溺愛が凄すぎます!
***


就業時間。お世話になった人たちに挨拶をして、三日間通った藤宮重工本社ビルを後にしようとして……。

「お疲れ」

どうしたことか、藤宮さんに立ちはだかられた。

「お疲れ様です。お世話になりました」

キョトンとする私と、無表情の藤宮さんが見つめ合っているのを、本社の社員さんたちが不思議そうに眺めてから社員入口を通過していく。

「過去形はおかしい。あなたの会社はこれからうちのグループだろう。いや、そうではなくて……」

律儀に訂正してから、藤宮さんは眉を寄せた。

「食事を誘いに来た」

「お誘いありがとうございます。ですが、今日は用事がありますので……」

「誰かつきあっている男でもいるのか?」

は? どうしてつきあっている“男”?

パチパチ瞬きしていると、藤宮さんの目がスッと細められる。

「そうじゃないなら、断ってくれないか。この間は叔父がいたので、まともに話せていない」

……用事って言っても、昼間に母さんからメールが来て【家に帰りに寄ってくの?】って、聞かれたから【何事もなければ寄るよ】と返しただけ。

たぶん、ちょっとした誕生日祝いをしてくれるんだろうなって気がしてる。

でも毎年ケーキを用意してあるわけじゃないし、工場のおじさん連中巻き込んで酒盛りになるだけの誕生日。

最終的にはお世話する側にまわるから、積極的に行きたいってわけでもなく、お祝いしてくれるんだから、行こうかなってスタンス。
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