雨上がり、空を見上げた。
[ 永瀬優斗 Side Story ]
虹花と付き合うようになり毎日が楽しくて仕方が無かった。
大切なものなんか作らずに生きてきたのにこんなに大切な存在が現れるなんて思ってもいなかった。
だけど誰かを愛してはいけない
俺が幸せと引き換えに払わなければいけない代償は命だった。
小さい頃から入院生活が続いていた。
ほとんど学校なんて行ったこともなかった
それが俺にとっての普通だった。
そして、小2の時に、
20歳まで生きられるか分からない
〝 心臓の病気 〟だと知らされた。
ドナーが見つかれば助かるかもしれないがもし助かったとしても記憶がなくなる可能性があると言われた。
幼いながらに、記憶がなくなって大切な人を忘れるくらいなら手術なんてせずに死んでしまいたいと思った。
毎日のように塞ぎ込んでひとり病院で泣いている毎日だった。
ある日そんな入院生活に耐えられなくなった俺は病院を抜け出して雨の中傘もささず1人で目的地もないのにただ走ったんだ。
気がついたら公園にいてその場で泣いていた。
涙と雨が混ざってどれが本物なのか分からなくなる。
すると突然泣いていた俺の頭上に雨が落ちてこなくなった。
びっくりして目を開けると同い年くらいの女の子が俺に赤い傘をさしてくれていた。
その時の記憶はこのくらいしか正直覚えていない。
だけどその日から泣くのをやめた。