エリート外科医と過保護な蜜月ライフ
「お礼はいい。俺のほうこそ、久美と過ごせてよかったよ。また連絡する」

そう言った先生は、ふいに唇にキスをした。一瞬のことだったけれど、私は顔が赤くなるのを自覚した。

「先生ってば、大胆過ぎますよ」

土曜日の駅前は、カップルや友達同士のグループなどで賑わっている。少し外れた場所に停まっているとはいえ、人に見られるかもしれない。

恥ずかしさを隠せない私とは対照的に、先生は余裕ある笑みを浮かべた。

「大丈夫だよ。誰も、この車を意識して見ていない」

「そうですか……?」

海外の有名高級車というだけでも視線を集めていたのが、窓から見えたけど……。

先生は、気にならなかったみたい。それ以上、反論するのも可愛げがないかなと思い、小さく笑みを返してシートベルトを外した。

そして車を降り、窓越しにもう一度挨拶をする。すると、先生は窓から手を伸ばし、優しく私の手を握った。

「また連絡する」

「はい……」

温かい先生の手を離したくない……。そんな気持ちを抑えて、笑みを向けて彼の手を離した──。
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