エリート外科医と過保護な蜜月ライフ
先生は、患者のことを思ってくれていて、気にかけてくれていて……。だから、キツイ言葉も出るんだ……。

私のことだって、リハビリさえすればほぼ元どおりに歩けるようになる。それなのに、私は会社に居場所がなくなったとか言って拒んでいた。

私よりもっと重症の患者さんを見ている先生には、私が甘く見えて当然……。

「そうだ、本を買いに行こうかな……」

以前は買い損ねたけれど、業界の動向が載っている雑誌があったはず。

会社に戻ったときのことを考えると不安が大きいけれど、前に進まなくちゃいけない。入院の時間を、無駄に過ごさないようにしようーー。


リハビリも順調に進み、退院が来週に決まった。一か月は長かったけれど、この時間のなかで、ほんの少しだけ自分が成長できた気がする。

そんなことを考えていた午後、外の穏やかな青空が窓から見えていた。早く外に出たいーーその気持ちを強くしているところで、病室のドアがノックされた。

「はい」

今日は、堂浦先生の回診の日だっけ。読んでいた雑誌をベッドの端に置いて待っていると、ドアを開けて入ってきたのは、隆斗先輩だった。

「久美ちゃん、お見舞いに来たよ」

「隆斗先輩⁉︎ 来てくださったんですか?」

白衣姿の先輩は、笑みを浮かべて私の側へ歩いてきた。
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