エリート外科医と過保護な蜜月ライフ
「まだ、そうと決まったわけじゃないですよね……。そもそも、肝心の先生に、直接聞けていませんから」

「たしかにね。だけど、兄貴もヒドイよな。こんな大事な話を、なんで久美ちゃんにしなかったんだろ」

先輩は首を傾げながら、チラリと私を見る。まるでそれが、こちらの反応を窺っているようでいたたまれない。

「必要なかったから……だと思います。先生には、その意思がないと信じていますから。それでは、失礼します」

会釈しその場を立ち去ろうとすると、先輩に腕を掴まれた。

「先輩、離してください。人が多い場所ですから」

夜でも、ホテルのロビーは賑わっている。観光客だけでなく、食事に訪れている人たちもいるから。

そんな場所で、堂々と腕を掴まれてしまっては目立ってしまう。戸惑っていると、女性の声が聞こえてきた。

「あら? 小松さん、隆斗さんともお知り合いだったんですか?」

いつの間に、恵さんが降りてきたのか。私たちを笑顔で見ていた。
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