エリート外科医と過保護な蜜月ライフ
エピローグ
「あーあ。久美ちゃん、本当に兄貴と結婚するのか。でも、式は十二月なんだよな? まだ数ヶ月先だし、考え直す時間はあるんじゃない?」

穏やかな日曜日の昼下がり、先生のマンションにやってきた隆斗先輩は、ソファで大きくため息をついた。

紅茶を先輩に出しながら、私は苦笑するしかない。そんな彼に、向かいに座っている先生はしかめっ面をした。

「隆斗、お前少しは反省してるのか? だいたい、恵さんにけしかけたりしなければ、あそこまで彼女は暴走しなかったかもしれないんだぞ?」

先輩は、あの船での出来事のあと、堂浦院長夫妻に問い詰められて、いろいろ話したらしい。

先生との結婚を考えていた恵さんは、早々に先輩に相談してきたとか。

先生がどんな女性が好みかとか、どういうことをすれば喜ぶかとか、いわゆる探りを入れてきたみたいだった。

そのなかで、私の存在を知った恵さんは、私に嫌がらせをして、先生のことを諦めさせようとしたらしい。

いつか恵さんにホテルに呼び出されたのも、先輩と手を組んでいたから。だからあのとき、先輩と“偶然”会ったのだと、今になって分かった。

病院で、恵さんに私を教えたのも先輩だったとのことで、先生は「やっぱりな」と呆れている。

「だってさ、兄貴は本当にずるいんだよ。両親は、兄貴ばかり肩入れしてて、挙句俺には兄貴を支えろって、そればかりだ」
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