エリート外科医と過保護な蜜月ライフ
イケメンエリート外科医として有名な堂浦先生に、まさか自分が診てもらうことになるなんて、想像もしていなかった。

「麻酔が切れてきたからか、痛みが少しあります……」

素直に言うと、先生は私の額に手を当てた。温かくて、大きな締まった手だ。指も長い。

「微熱があるな。点滴には抗生剤も含まれているから、そのうち引くと思う。今日はゆっくり休んでいよう」

「はい……」

「一週間もすれば、リハビリができるようになるから、それまでの我慢だ」

「リハビリ……ですか?」

「そうだ。歩行訓練をしないといけないからな。他になにか症状は?」

小さく首を横に振ると、先生は点滴袋と足のギプスを確認して部屋を出ていった。

リハビリをしないといけないなんて、憂鬱……。というか、やる気がまったく出ない。

だいたい、この事故のせいで、私は営業担当をすべて外された。同期や後輩たちに振り分けられたらしく、そこには大口の取引先も含まれている。

今まで地道に努力をして得た顧客を、一瞬にして失ってしまったうえ、課長からは会社を心配しなくていいと言われた。

それが優しさだって分かっている。気遣いだとも。でもやっぱり、辛かった……。
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