エリート外科医と過保護な蜜月ライフ
強い女性になります？
それから私たちは、マンションへ向かった。着いたときにはお昼を過ぎていたから、あとでお昼ご飯を作ろうと密かに決める。

先生との二人きりの時間を堪能したいから、外食にはしたくないし……。

「どうぞ、先生。本当に狭い場所なんですが……」

「いや、そんなことない。お邪魔します」

先生は靴を脱ぐと、それを揃えて玄関を上がる。高級そうな革靴だし、マナーもきちんとされているし、本当に育ちのいい人なんだな……。

部屋へ案内すると、先生は遠慮がちに入ってきた。男性を招待するのは初めてだから、私も緊張してくる。

だけど、二人きりの時間を過ごしたい──。その思いのほうが強かった。

「ソファーとかがないんです。ベッドでも、こちらのクッションでもいいので、座ってください」

いざ先生を案内して、今さらながら気づく。先生は、長身で足が長い……。床に座ってもらうには、窮屈かも……。

ピンクのクッションは、低反発のものだから、肌触りと使い心地はいいはず。これに座ってもらえば、少しは快適かな。

「足を伸ばしてくださいね」

「ありがとう。そんなに気を遣わなくていい。それより、綺麗なクッションなのに、座っていいのか？」

先生は、ためらいがちにクッションを眺めている。先生こそ、気を使い過ぎだと思うのだけど……。

「大丈夫ですよ。私も、いつも座ってますから」

微笑みながら答えると、先生はそれを横に置いた。

「先生？ あまりお気に召さなかったですか？」

ピンクだし、好みじゃないかな……。拒否されたようで残念に思うと、先生は首を横に振った。

「そうじゃない。これは、久美が使ったらいい。元々、きみのなのだから」

そう言って、先生は直に床に座った。ラグもなにも敷いてないから、硬くて冷たいはず。

「先生が使ってください。痛く……ないですか？」

クッションを差し出すと、先生は私の腕を掴み優しく引き寄せた。
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