続*もう一度君にキスしたかった

「確かに催事の開催地、気になりますけど今日はダメです。駅でお昼だけ食べて、まっすぐ帰りましょう。身体休めないと」

「……仕方ない。じゃあ、開催までに一度見に行く? とても綺麗な場所だよ」

「それはぜひ行きたいです! 菓子博、話聞いてるだけでわくわくしてきます。滅多にないチャンスですよね。関西勤務だったら関われたのかなあ」


彼の提案が嬉しくて、きっと私の表情に正直に表れていたのだろう。
彼が私へと視線を移した時、柔らかい微笑みが困ったような苦笑いに変わった。


「真帆は本当、仕事が好きだね」

「えっ、好きですけど」

「僕は半分以上デートのつもりで誘ったんだけどね。真帆は完全に視察のノリだよね」

「し……仕事も好きですけど……デートでももちろん、嬉しいですよ」


タクシーの中だ。
運転手さんに聞かれている。


そう思うと自然小声になって、耳が熱くなる。
その耳に、彼の手が柔かく触れそのまま首筋まで指先が辿っていった。


「計画立てて、また来ようか」

「はい」


ああ。
仕事も好きだけど、朝比奈さんも大好きです。
その気持ちは本当なんです。

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