続*もう一度君にキスしたかった
大変は大変なりに、きっと幸せなんだろうか。
元気に走り回っている翔くんを見ていると、そうなのだろうなと勝手に思う。だけど外側から見ただけではわからない苦労もいくばくかあるだろう。
見ればどのお母さんも子供を見て笑いながらも、どこか疲れていたりもする。いや、あからさまにぐったりしているお父さんもいる。
もちろん子供はそんなことはお構いなしにキラキラした目ではしゃぎまわっているわけで。
「吉住さん、もしかして」
キッズスペースの明と暗を観察し、しみじみと物思いにふけっていれば、隣から話を振られた。
「結婚?」
「ええっ、なんで」
「なんでって。すげえ知りたそうだから」
素直に顔に出るね、と笑われた。
「まだ、はっきりと言われたわけではない……ですが」
「考える相手がいるんだ」
「そう、です」
気恥ずかしくなって、ちょっと目を逸らして頷くと、全く思いもよらない質問が向けられる。
「迷うような相手とか?」
「違います!」
とんでもない。
と慌てて頭を振って否定した。
「私にはもったいないくらいの人で」
「じゃあ、仕事か。この業界、マネージャーなんてしてたら家事と両立なんて難しいわな」
「そう、そうなんですよ! 繁忙期なんて家で寝るより会社で寝ようかなとか思うときがあるくらいじゃないですか」
「女の子はやめときなね。俺はやったけどさ」
「私も腰かけで仕事してきたわけじゃない、つもりなので……いざ、目の前に結婚か仕事かと選択肢を持ちかけられて、すぐに切り捨てられるようなものでもなくて」
まだまだ、半人前のつもりでやってきた。
自分なりに納得するまで、と考えたらあと何年かかるかなんてわからない。
朝比奈さんや、私の年齢を考えても、どこかで区切りはつけなければいけない、そうわかってはいる。