続*もう一度君にキスしたかった



その後、顔の火照りが治まってから、こそこそと部屋を出た私たち。
朝比奈さんは、そのまま出張に赴いた。


オフィスに戻った私に、伊崎がちらっと、パソコンの向こうから顔を出す。


「……もしかしてさあ、いた?」

「は? 何が?」


統括室に居たかどうか、を聞いているのだろうとすぐにわかったけれど、とりあえずすっとぼけると、ぼそっと切実な呟きで返ってきた。


「……俺も彼女欲しいなー」

「いいんじゃない? 伊崎ソコソコモテるじゃない」

「お前にいわれるとなんかむかつくわー」

「そんなこと言われても」

「なー、誰か紹介してくんね?」


むかつくと言われて、女の子を紹介するような人間がいると思ってるのだろうか。


なーなーなー、としつこい伊崎を無視しながらパソコンに向かいキーボードを叩き続けた。


たった、数日。
土曜の夜には帰ってくる。
心配は然程していなかった。

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