続*もう一度君にキスしたかった


なんだろう……なんで?


仕事中なら仕事中で、最初から出ないか出たなら何か一言、欲しかった。
何も言わずに切るなんて、朝比奈さんらしくもない。


「何かあったのかな?」


少し異様なざわめきに聞こえた。
それに、男の人が呼んだ『木藤』という名前。


木藤さんと、あと誰か数人と一緒にいるのだろうということはわかったけれど、それ以上が何も見えなくて、何も言わないまま切られた理由がわからなくて。


じわじわと、胸の中を焦りが浸食する。
都合が悪くて切っただけなら、あとでかけ直してくれるはず。


そう思って、一度スマホをバッグに仕舞い近所のスーパーに入ったのだが、全く買い物に集中できずカゴに入れたものはうす揚げときゅうりとトマトとパンと、クリームチーズ。


こないだ朝比奈さんがポテトサラダを美味しそうに食べてたのでまた作ろうと思ったのだが、きゅうりは買ったのにジャガイモとリンゴとミカンを忘れた。


うす揚げは多分お味噌汁を作ろうと思ったのだけど、他の具材が今冷蔵庫に入っていたか覚えてない。
クリームチーズはお酒を飲む時に、だけどクラッカーを忘れた。


結局30分もしないうちにスーパーを出て、再びこちらからかけ直してしまった。
けれど、今度は呼び出し音も鳴らずにアナウンスが聞こえるだけだった。

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