続*もう一度君にキスしたかった


「こんにちは。検査の結果は、異常無しでした」



ぺこ、と頭を下げて私も慌てて笑顔を取り繕う。
彼女は、やはりほっとしたのだろう、胸を手で抑えるしぐさを見せながら眉尻を下げた。


「良かったぁ! ほんと、ごめんなさい。わたしが逃げ遅れたせいなのよ」

「いえ、木藤さんに怪我がなかったみたいで良かったです」


朝比奈さんの先輩ってことだから……ひとつ上なら三十四歳、てことだよね。
なんか、可愛らしい人だなあ。


服装なんかは落ち着いた印象で年相応に思えるけれど、表情の作り方や顔立ちなどが明るく、朝比奈さんより少し若々しく見える。


「あ、今売店に飲み物を買いにいくところで。良かったら木藤さんのも買ってきます。何がいいですか?」


そう言うと、彼女は手を口元にあて考えるような仕草を見せた後、思いもよらぬ提案をした。


「ね、良かったら売店の横のカフェに行かない? そこのコーヒー美味しいのよ」


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