【完】恋歌

「同情なんかじゃないよ。本当に待ってたんだから…」


困ったような台詞に、彼女が険しい顔付きになる。
きっと、俺の誘いに乗るまいと、自分を征しているんだろう…と思った。


彼女は、計り知れない孤独と戦っている。
俺が感じてきたモノとは異なる孤独と…。



「ねぇ?…俺を殺す前に…少しだけ、話をしない?」


気付いたら、そんな事を口走っていた。
自分でも驚く程自然な気持ちだった。
戦うつもりなんか、初めからない。


彼女に殺されるなら本望だと、心から思っていた。
だから…その前に、彼女の呪縛だけでも解いてあげたいと思った。


出来るだけ…1つ残らず。



最愛のヒト…俺の腕の中へおいで。
貴女の知らない、世界を教えてあげるから。

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