【完】恋歌


彼女の体から溢れ出すオーラが眩しかった。
彼女は間違いなく、自分の求めている存在。


だから、ほんの少しでも良いから、この…二人の時間を保ちたかった。


例えその後で、どんなに残虐な仕打ちを受けても、それでもいいと思うくらい、甘い時間を作りたかった。


彼女は、伏目がちに自分のことを話そうとして、口を噤んだ。


だから、オレはそんな彼女に対して笑みを零す。


「そんなに、怯えないで…?貴女が話せることからでいいんだから、ね?」


相変わらず、縮まることはない距離感。

それでも、良かった。

この場所を、この時間を、彼女と共有出来るのだったら…。



暫く続いたけして辛くはない沈黙の果てに。
ひゅうっと風が吹いたのと同じくらいの小ささで…。

< 61 / 79 >

この作品をシェア

pagetop