初恋~ある女の恋愛物語~
『馨さん…』

言葉を発した瞬間
馨さんがまた私の目を
見つめていた

言わなきゃいけないと
思えば思うほど
苦しくて切なくなる

馨さんと続けてきた
この関係は、私にとって全てだったかもしれない

思えば高校生の時から
ずっと続いている

恨んだ時もあった

馨さんのせいで
たくさん悩んだ

たくさん涙を流した

本気の恋が出来ない事を馨さんのせいにした

でもそれは違う

私が踏み出せなかった
だけなんだ

全部自分のせいなんだ

私自身が、馨さんとの
関係を断ち切るに
至らなかった事が原因

最終的には捨てないで
なんて思った時もある

そんな馨さんに私は
何て言えばいいんだろう

もっと考えてから
ここに来るべきだった

ここに来てから
たじろいでも
どうにもならないのに

でも終わらせなきゃ

私は次に進めない

浩太さんの笑顔が
脳裏に浮かぶ

あの笑顔に飛び込んで
幸せな私になりたい

そう思ってここに
来たはずなんだから

浩太さんに辛い思いを
させたくはない

絶対結ばれないと
わかっている関係を
続けていくよりは
浩太さんの胸に
飛び込んだ方がいい

そう決めていた

決心出来たはずだった

それなのに…

私の決心はいつの間にかなくなりかけていた

これじゃダメだと
充分わかっているのに

自分から口を開く事さえ出来ない私は
この場から
逃げ出したくて
たまらなかった

そうはいかないのに

わかっているのに
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