初恋~ある女の恋愛物語~
馨さんから結婚の
言葉が出たのは
馨さんが仕事を辞めて
半年経ったある日

お父さんの引退が
きっかけだった

新聞にも後継者として
馨さんの顔が載った

ますます私の
手の届かない所へ
行ってしまうんだ

私は新聞を
くしゃくしゃにして
ゴミ箱に放り投げた

その時電話が鳴った

『千穂…』

愛しい馨さんの声

大好きな馨さんの声

『会って話がしたい』

話の内容はわかっていた

最後なんだって
わかっていた

馨さんは最後を
匂わすように
最高級のホテルを
用意してくれていた

馨さんが仕事を辞めて
私は馨さんの家には
行けなくなった

お父さんの会社を
継ぐということは
結婚を意味していたから

私の出入りを
今まで知らないフリを
していただろうけど
今はそうはいかない
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