ヒーローの君
そこに、筋のしっかり通った男の人の声が響いた。


「何やってんだ、てめえら!!」


男たちの手が思わず止まる。


私は声の主の方を懸命に振り返った。

そこに立っていたのは、私と同じ学校の制服を着た男子生徒−−−−栗本修一だった。


栗本のことは入学当初から知っていた。入学式の日に、同学年に超イケメンがいると女子の間で話題になったのだ。
どのくらいイケメンかというと、入学後数日間は教室の入り口に人集りが出来たくらいだ。

しかし、誰が話しかけても無愛想にそっけなくあしらうので、今はもうそこまでの人気は失っている。
ただ、そんなやつでもやはり顔が良いだけで根強いファンもいる。


そんな無愛想で無気力な栗本が、大きな声を出して現れたのだ。


「見れば分かんじゃん?」


片方の男が答える。するともう1人の私に顔を寄せて、あの人彼氏ィ?、と尋ねてきた。

私が考えるほどの間を与えずに、栗本が答える。


「俺の彼女だ。一刻も早く離れろ」


人をも殺しそうな眼光で言い放たれた言葉に目を見張る。

え、今彼女だって言った?どういうこと?

いつもなら分かりそうなことも、恐怖とか不快感とか驚きとかたくさんの感情にかき消されて頭が回らない。

ほんと?と男に問われて、訳も分からずとりあえずこくこくと頷いた。
すると、男から舌打ちが聞こえる。


それを聞いて、栗本はいきなり挑発するようにニヤリと笑った。
< 5 / 5 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

カエデ並木に君の後ろ姿

総文字数/7,818

恋愛(純愛)13ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
別れる男に、花の名を一つは教えておきなさい。花は毎年必ず咲きます。 川端康成の小説の中の一節である。 まだ花なら良かった。 君はもっと大きな記憶を僕に焼き付けて去って行った。 僕は紅葉をみると君を思い出してしまう。 今でも鮮明に思い出してしまう君の後ろ姿に、僕はまだ囚われているのだ。
Starry Night Magic

総文字数/17,209

恋愛(純愛)27ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
7月7日、七夕。 年に一度だけ織姫と彦星が会えるその日に、 「織姫と彦星」をやめたふたりの話。 ~After the Magic~ 続編更新始めました! ふたりの1年後のお話です。
短い永遠を、君と

総文字数/2,835

恋愛(純愛)6ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
無邪気に永遠を信じられる人は強いと思う。 純粋に永遠を信じる強さを持てない主人公の 大切な人の愛し方とは?

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop