釣り合わない!!~溺愛コンプレックス~



「店長、店長にお客さんが見えてますよ?」

客?

「ありがとう。事務所に通してもらえる?」


始まったばかりのメイク講座も順調に、講座を受けたお客様が商品を購入し、クチコミやSNSで広がる。

伸びずに悩んでいた売り上げもこの企画を機に前月比とは比べ物にならないくらい飛躍した。


「佐ー野っっ!!元気してたか?」

客として事務所に顔を見せたのは、同期入社で営業部に配属された樋野君だった。

「樋野君っ⁉座って座って!

久しぶりじゃんどうしたの⁉」

コーヒーを飲みながらこんな風に向かい合って喋るのはどれくらいぶりだろうか。

入社仕立ての頃にはよく仕事帰りに飲みに行ったりもしたけれど、お互い仕事に慣れた頃にはたまに休憩室で顔を合わせる程度だった。


「店、繁盛してんじゃん。佐野のアイディアなんだって?」

「最初だからお客が入ってるだけかも。

まだまだ気は抜けないよ。」

「いや、それでもずっと企画部だったんだから、頑張ってるよな。」


同期。というのは有り難い存在だ。

部署は違えど、新人として共に悩んでいた時期を愚痴を言い合って乗り越えてきた、言わば戦友だ。

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