社長は今日も私にだけ意地悪。
「あの、社長……私に何か用事でしたか?」

何の用事もないのに連絡だけ急かされているのだと思っていたけれど、わざわざ社長自らこちらへ足を運んできたところを見ると、もしかしたら本当に私に何か用件があるのかもしれない……。


「お前が携帯見てるくせに連絡よこさないから来たんだよ」


違った。やっぱり用事なんてなかったようだ。
連絡をよこせと言われても、そう気軽に電話したりメッセージを送ったり出来る相手じゃないということは、当の本人はわかっていないのだろうか。どちらにせよ、かなり強引だ。


……そう思うのに。


「そういや、市民お花見祭りだっけ? 上手くいったみたいだな。お疲れ様」

と、急に労いの言葉をくれたりなんかして……。


不意打ちでそんなこと言われたらーーしかも意地悪な言葉の直後にそんな優しい笑顔まで向けられたらーーどうしたって胸が疼く。


「あ、ありがとうございます。本人達からしたら反省点もたくさんあったみたいですが」

「過信して自惚れるより良いことだよ。彼等はきっと伸びる」

にこやかにそう話す彼のその笑顔は、私と二人きりの状況だというのにやっぱり黒くはない。それどころか、どこか安心する表情。


……社長といると、何だか心臓が落ち着かない。
落ち着け、静まれ。
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