社長は今日も私にだけ意地悪。
入社式の日、ビルのエントランスで彼とぶつかったあの時、社長は私に『以前、俺と会ったこと覚えてる?』と聞いてきた。

全く覚えがなかった為、面接の時のことを言っているのだと思ったけれど、実はそうじゃなかったんじゃないだろうか。


私が覚えていないだけで、彼は昔の私を知っているんじゃないだろうか? そう思えた。


だけど彼は


「それはどうでしょう」

なんて、含み笑いで答えるのみ。
悔しい。だけど、真実を教えてもらえない悔しさよりも、彼のその妖艶な笑みにまたしても胸がドキンと高鳴ってしまった悔しさの方が、よっぽど強い。
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