社長は今日も私にだけ意地悪。
「なるほどな。まあ、複数人で活動していながらもそのうちの一人に仕事の話が来るのは何も珍しいことじゃない。今回に関しては、そんな有名雑誌の編集者が偶然彼に目をつけてくれたことを素直に喜ぶべきだろう」

私の話を全て書き終えた彼は、淡々とも言える口調でそう言った。

やっぱり、この仕事をいただけたことはとても有り難い幸運なんだ。

だけどどうしても手放しでは喜べない。
音楽とは何も関係のない起用理由、仕事内容、選ばれたのも一人。この仕事を引き受けても、彼等の関係性や方向性は何も変わらずにいてくれるのだろうか。


「難しい顔してんじゃねえよ」

ふに、と急に正面から頬を摘まれ、思わず目を見開く。


「マネージャーだからって、一人で全部背負い込む必要は何もない。
マネージャーの仕事は、自分が決めたことを担当アーティストに伝えることじゃない。担当アーティストと一緒に方向性を考えていくことだ」

視線の先の社長は、悪戯っ子のような……それでいてどこか安心する、そんな笑顔をしていた。
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