社長は今日も私にだけ意地悪。
「一緒に考えていく……」

「そう。確かに、担当アーティストの未来や将来はマネージャーにかかわってくる部分もある。それだけ重大な仕事だ。それでも、何かを選択するのは、マネージャーではなくアーティスト自身だ。彼等が後悔のない選択を出来るようにサポートしてやれ」

そう言うと、社長は私の顔から手を離した。
触れられていたところが、まだ熱い。
頬を摘まれていたにもかかわらず、まだ触れていてほしかった……なんて考えてしまったのは何故だろう。


「それじゃあ、俺は行くけど」

そう言われて私はハッと気付く。
社長がここへ来たのは、彼が自ら足を運んだ訳だけれど、忙しいはずの彼を引き止めて相談なんかしてしまった。更に、的確なアドバイスまでいただいてしまった。
そもそも、彼がここへ来たのだって、私のことを心配してくれたからだと思うし……。

嬉しいのと同時に、申し訳なさが一気に込み上げる。


あ、そうだ。


「社長、これを」

歩き出しかけた彼に声を掛け、手を差し出す。


たまたま持っていた、個包装の一口サイズのチョコレートを彼に手渡した。


思わず受け取ってしまった、といった様子の社長は、どこかぽかんとした表情を見せた後、ははっと笑った。だけど。


「悪い、俺、甘いもの苦手なんだ」
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