社長は今日も私にだけ意地悪。
それにしても暑い。クーラーは効いていると思うけれど、スタジオってこんなに暑いものなの?
思わず片手で顔を仰いでいると、隣にいた撮影スタッフの女性が「暑いですか? モデルを照らしているライトが見た目以上に熱いんです」と教えてくれる。

そうか……ライト。離れた場所にいる私が暑いと感じているのだから、そのライトのほぼ真下で撮影をしている木崎さんはとっても暑いのだろうなあ。


「よし」

私は少しの時間だけ、スタジオを抜ける。


そして正午になり、お昼休憩を取ることにした。

ふぅ、と息を吐きながらこちらへやって来る木崎さんに、私は先ほど買ったペットボトルのミネラルウォーターを渡した。

「お疲れ様です」

「ああ、どうも。喉乾いた」

そう言って彼は水を半分ほど一気に喉へ流し込む。うん、水買っておいて良かった。


再び息を吐いた彼に「本当にお疲れ様です」と言いながら、スタッフの邪魔にならなそうな場所を探す。さすがに控え室は用意されていないので、一回スタジオを出て、廊下のロビーのソファへ二人で腰掛けた。


「撮影、やってみてどうですか?」

「どうも何も、こんなの初めてだから言われた通りのことやるだけで精一杯だよ。それだって、ちゃんと出来てるのかわからねえ」

「出来てます! バッチリですよ! とてもカッコ良いです。それに、周りの方々への挨拶は礼儀もきちんとされていて、鼻が高いです」

「そりゃどうも」

「雑誌に載ったらきっと女性にモテますよ」

「俺は別にモテたい訳じゃねえんだっつの」
< 68 / 154 >

この作品をシェア

pagetop