社長は今日も私にだけ意地悪。
それから三週間後。今日は例の撮影日だ。
私と木崎さんは駅で待ち合わせをし、雑誌編集者から指定された都内のスタジオへ一緒に向かった。
九時にスタジオ入りすると、カメラマンやスタイリストなど、多くの現場スタッフとその場で打ち合わせを行なう。
その後、用意された衣装に着替えてもらい、髪もセットしてもらった。衣装といっても、特別感のある服ではなく、カジュアル系のラフな感じだった。今回の撮影では、とにかく木崎さんの顔を目立たせたいから服はなるべく大人しめで、という傾向らしい。
色々心配だったけれど、驚いたのは木崎さんのスタッフへの態度。
いつも口が悪くて、私といる時も踏ん反り返った姿勢で話すことが多い彼。
だけど撮影スタッフの前では「本日はどうぞよろしくお願いします!」と声を張り上げ、綺麗なお辞儀をしてみせた。
……そんな態度が出来るなら私の前でもやってほしい、と言いたかったけれど黙っておいた。何にせよ、スタッフから彼への第一印象は上々の様子だった。
十時になり、撮影がスタートした。
表情やポーズを色々指定され、木崎さんがその要望にぎこちなく応えていくのを、私は少し離れた場所から見守っていた。
言われたことをしっかりとこなしているけれど、やはり緊張は隠さないでいるようだった。
でも、こんな仕事は初めてなのだから緊張するのは仕方のないこと。
社長も以前言っていた。RED searchはまず場数をこなすことが大事だと。それは必ずしも音楽に限ったことではないだろうと思い始める。