社長は今日も私にだけ意地悪。
「え?」

「翔も、南も、七瀬も。俺等みたいな売れるかどうかわからない人間のために一生懸命になってくれるあんたに、皆感謝してる。ありがとう、とかは柄じゃないからなかなか言えねえけど」

私から目を逸らし、少し赤らんだ頬でそう話す彼の言葉が、何よりの〝ありがとう〟に聞こえる。


「だから、誰のこと好きなのか知らねえけど、もっと自信もっていいんじゃねえの」

素っ気ない、ぶっきらぼうな言い方。だけど凄く嬉しい。


「……はい。ありがとうございます」

社長のこと、もう少しだけ頑張ってみようかな……? 玉砕するのは、もう少し後でもいいかもしれない。
< 70 / 154 >

この作品をシェア

pagetop