キミはずっと、かけがえない人



そのあと、逃げるように部屋に戻ったのが不自然だったんだ。

この人は、それを見てほっといてはくれないんだ。



「何で泣いた?」



私と向き合うと、そっと目尻に触れながらそう言う。

泣いたことさえバレていたらしい。



「泣いていない」



理由なんて言えない。

私自身、分かっていないんだから。



「そんなに目真っ赤にして、説得力ないけど」



そう言ったかと思えば、今度は目尻をペロッと舐める。



「な、何してるのっ」

「俺に弱みを見せるとどうなるか分かってる?」

「……え?」



ちょっとだけ切なそうに見られて。

かと思えば、正面から抱き締められる。

力いっぱい。

そして、ゆっくりと後ろへ倒れていく。

え、ちょっと待って。

何で、押し倒されてるの。




< 75 / 210 >

この作品をシェア

pagetop