彼と愛のレベル上げ
翌日―――

ワンピースを着て髪も巻いてみたけど、どうしても大人の女性にはなれなくてそっと溜息をつく。

そんな私を見ていたジュンさんが、


「モモ、ため息なんてついてどうしたんですか?」


まさかここで大人に見られたいなんて言ったらまたあきれられる。

だから


「……ちょっと、緊張しちゃって」

「大丈夫ですよ、モモ。」


大丈夫と言われ、頭を撫でられる。

ほら、こういう所子供扱い。

だけど、その手のぬくもりが私の気持ちを安心させる。



約束のホテルにつきラウンジに行くとお婆様と母ともう一人。

ジュンさんのご両親と聞いていたけれど、男の人の姿はない。


「天ケ瀬桃華です、はじめまして」

「純哉の母です。はじめまして。ほんと聞いてた通りの可愛らしい方ね?」


ジュンさんのお母様はお婆様をそのまま若くさせたような感じの上品な女性。


「親父は?」

「それがね。楽しみにしてたのに急に予定が入ってしまって」


本当に残念そうに言うお母様。


「それで富貴子さん?」

「あら、ご不満?」

「いえ、昨日会った時に言ってくれたらよかったのに」

「あの時はまだ連絡が来てなかったのよ」


そんなやり取りをした後、レストランに移動した。

私は緊張していたために言葉少なにみんなの話を聞きながら食事をしていた。

お母さんはいつの間にかお母様とも仲良くなっていてお婆様と三人で楽しそうに話をしている。


「モモ、大丈夫ですか?」

「え?あの…」


心配そうに見つめるジュンさん。

せっかくお母様と会えたのだから何か話さなくちゃいけないんだけど。


「あきれるぐらいに過保護ねぇ、純哉ったら」

「そうなのよ、すごいでしょう?そのうち桃華ちゃんに嫌われるんじゃないかしら?」

「うるさいですね」


お母様とお婆様の口撃に眉間にしわを寄せて文句を言うジュンさん。

その姿がなんだか子供みたいで、つい笑ってしまった。

お婆さんやお母様の前だとやっぱり子供に戻るのかな?

そんなジュンさんの姿を見れただけでも十分だ。

急に対面する事になったお母様だけど逆によかったのかもしれない。
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