ワンだふる・ワールド ~飼育系女子の憂鬱な1週間

ハチ




――やはり、秘書になるしかないのか  


何か打つ手はないものかと考えるが、堂々巡りして、結局また振り出しに戻ってしまう。
悩みながら、何とかマンションの部屋の前まできて、カギを開ける前に胸一杯に深呼吸をした。


ハチの前では、極力明るく振舞おう。
私の立ち位置が変わっても、二人の将来には関係はない。暗く沈んだところで、ハチに余計な心配を掛けるだけだ。  

「よし」と気合を入れて、ドアを開ける。
リビングの電気が点いている。
ハチはまだ起きているようだ。


が、リビングのドアを開けると、ハチはソファで横になって眠っていた。


キッチンに目を移すと、テーブルにはハンバーグとサラダが2つずつラッピングして置いてある。
私の帰りが遅くて、待ちくたびれたハチは眠ってしまったのだろう。


昨晩の言い争いがあった後だ。
仲直りの印にか、私の大好物を作って待っていたであろうハチをより愛おしく思う。


子猫の言葉を借りれば、この無邪気な笑顔は私だけのものだ。
是が非でも、守らなくてはならない。


起こしては可哀そうだと、夕食を冷蔵庫にしまい、ハチに毛布を掛けて沙希はそっと電気を消した。  
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