エリート社長の許嫁 ~甘くとろける愛の日々~
「あっ、峰岸織物の峰岸と申します。弊社の——」
「とりあえず立とうか?」
「あっ、すみません……」


彼は実に自然な動作で手をスッと差し出し、私の腕を支えて立たせてくれた。

恥ずかしい。
夢中になりすぎて失態ばかりだ。


「ケガはしてなさそうだね。痛いところはない?」
「はい。平気です」


少しぶつけた膝が痛むがたいしたことはない。


「うち、ストッキングはやってないんだよ」


彼が私の足に視線を落としてそうつぶやくので、私も見ると、ストッキングが左右共に思いきり伝線している。


「すみません。お恥ずかしいところを……」
「すぐ近くにコンビニがあるから、そこなら売ってると思うけど……」


こんな大きな会社の社長さんから、ストッキングの心配をされるとは思ってもいなかった。
一瞥されて終わりでもおかしくはないのに、優しい人のようだ。
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