エリート社長の許嫁 ~甘くとろける愛の日々~
「ご心配には及びません。あっ、あの、弊社は小さな会社ですが——」
「社長。遅れますので」
なんとか話を聞いてもらいたくて口を開いたのに、秘書が一ノ瀬社長に声をかける。
「溝口(みぞぐち)、サンプルをお預かりして」
「ですが、社長……」
「時間がないので失礼しますね。足、お大事に」
一ノ瀬さんはほんの少し微笑んでから、車に乗り込んでしまった。
「ありがとうございます。どうぞよろしくお願いします」
溝口さんに慌ててサンプルと名刺を渡し、深く頭を下げる。
ふたりを乗せた車は、すぐに去っていった。
採用してもらえる保証はまったくない。
それどころか、サンプルを見てもらえるかどうかもわからない。
だけど、まったく手の届かなかった人に少しだけ近づけた。
ほんの少し、前進だ。
ちっともうまくいかないせいで落ちそうになる気持ちを必死に奮い立たせる。
峰岸織物は、私が守る。
決意を新たに、ブランピュールをあとにした。
「社長。遅れますので」
なんとか話を聞いてもらいたくて口を開いたのに、秘書が一ノ瀬社長に声をかける。
「溝口(みぞぐち)、サンプルをお預かりして」
「ですが、社長……」
「時間がないので失礼しますね。足、お大事に」
一ノ瀬さんはほんの少し微笑んでから、車に乗り込んでしまった。
「ありがとうございます。どうぞよろしくお願いします」
溝口さんに慌ててサンプルと名刺を渡し、深く頭を下げる。
ふたりを乗せた車は、すぐに去っていった。
採用してもらえる保証はまったくない。
それどころか、サンプルを見てもらえるかどうかもわからない。
だけど、まったく手の届かなかった人に少しだけ近づけた。
ほんの少し、前進だ。
ちっともうまくいかないせいで落ちそうになる気持ちを必死に奮い立たせる。
峰岸織物は、私が守る。
決意を新たに、ブランピュールをあとにした。