エリート社長の許嫁 ~甘くとろける愛の日々~
「そう、でしたか。どうりで峰岸織物さんへの肩入れが——」
「仕事に私情をはさんだ覚えはないが?」


すかさず翔さんが言い放つと、稲田さんは眉根を寄せた。


「そう、ですか。失礼しました」


彼女は小さく頭を下げるものの、表情が曇っていて納得しているようには見えない。


「稲田の家はこっちのほうだったか?」
「いえ。実家がこの近くでたまに来るんです。それでは」


私を一瞥した彼女は、すぐに行ってしまった。
すると翔さんはなんでもなかったように私の手を握り、再び歩き始める。


「翔さん、ごめんなさい。稲田さんに知られたらまずかったですよね」
「別に構わない。砂羽は俺の彼女だし、自慢したいくらいだよ」


仕事がやりにくくなるかもしれないのに、そう言ってくれる彼は優しい。


「また茶会に来ような」
「はい」


せっかくのデートなのに、沈んでいるのはもったいない。
私は笑顔で返事をした。
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