エリート社長の許嫁 ~甘くとろける愛の日々~
そう口にした彼女は、ニコリともせずクールな表情を崩さない。

一方翔さんは「ただいま」と私に向かって笑みを作り、頭をポンと叩いてから仕事部屋に行ってしまう。

どうして稲田さんが?

呆然としていると、彼女は私に丁寧にお辞儀をする。


「夜分にすみません」
「いえ……」


彼女は私の頭からつま先まで視線を這わせ、表情を曇らせた。


「一ノ瀬社長のそばにいらっしゃるおつもりでしたら、それ相応の服装をお願いできませんか? 社長は弊社の広告塔でもいらっしゃいますので、周りの人間が足を引っ張るようなことがあってはなりません」
「はい。すみません」


今着ているのは、彼と出会う前に自分で買ったカットソーとパンツだ。

翔さんにたくさん服をもらったけれど、家で料理をするだけのために着るのはもったいなくて着られない。

だけど、もし私のせいで翔さんの品格を落とすようなことがあるとすれば、彼女の言う通りなのかもしれない。
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