エリート社長の許嫁 ~甘くとろける愛の日々~
目をパチクリしていると、橋さんは優しく微笑む。


「一ノ瀬さんの会社は洋服で頂点を、峰岸織物は和服で。まあ、比べたら叱られちゃうくらいの業績の違いはあるけど、そのくらいの意気込みでやらないとね。砂羽ちゃんは由緒正しき家柄の娘さんだ。俺たちが足を引っ張るわけにはいかない」
「橋さん……ありがとう」


そんな優しい言葉をかけられたら、目頭が熱くなっちゃうじゃない。

翔さんと付き合いだしてから幸福感で満たされてはいるけれど、本当に私でいいのかという迷いは常にある。

あんな大きな会社の社長さんの隣が、つぶれそうな繊維メーカーの娘って、どう考えても釣り合わないもの。

もしかしたら橋さんは、そんな私の気持ちに気づいているのかも。
でも、それでも大丈夫と言ってくれた気がする。


「砂羽。実は、一ノ瀬さんのご提案を受けようかと思っているの」


私たちの様子を目を細めてうれしそうに見ていた母が、そう言い出した。
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