うさみみ短編集
佐倉は、自分の運の悪さを呪った。




今日は家族サービスをする事になっていた。


勿論、二十九歳独身の佐倉から、何が家族サービスだと言い張る連中も少なくないだろうが、彼の親は孝行という言葉に煩い。






「誰かの為になる事は素晴らしいんだよ」と毎日飽きもせず同じ言葉を繰り返した。





だから、彼が警察学校へと進路を決めた時は、手を叩いて喜んでくれたものだ。







その親が久しぶりに実家の九州から出向いてき、皆で食事会と予定がたった所で、このザマだ。







佐倉は何度も右腕の時計を確認している。




待ち合わせの相手が、彼女でない事は嘆かわしいが、せっかく遠方から来た親を出迎えられないのは、心苦しいものがあった。







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