囚われの王子様。

「行きながら話しましょう」


海外から帰ってきたばかりなんだから、忙しくないわけがない。

そう思い提案すると、須藤さんは『そうだな』と頷いて、テーブルに置いてあった伝票を手にする。


そんな須藤さんに、慌てて立ち上がった私はようやく気づいた。

カフェ内の視線に。


落ち着いた雰囲気の店内は、仕事帰りであろう女の人が大半で、ちらちらと須藤さんを見ている。


聞こえてくるのは、『あの人格好いい』『足長っ』などというひそひそ声。


すごい…。ここまで視線を集めるなんて。


でも須藤さんみたいな人が同じお店に居たら私でも言うかも、と思いつつも。

同時に、隣にいる私も『あの人が彼女?』『似合わないー』なんて言われてるんじゃない?と勝手に被害妄想して居心地の悪さを感じ始めた。


だけど須藤さんは、そんな視線を機にする様子もなく、颯爽とレジまで進む。

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