囚われの王子様。
「じゃあ、おやすみなさい。ここまで、送って下さってありがとうございました」
また会社で、と会釈すると、
「おやすみ」
と、軽く手を上げて須藤さんが返してくれる。
なんだかここだけ切り取ると恋人同士みたいだな。
なんて、変なことを考えてしまった。
いやいや、何考えてんの私。
変な考えを打ち消すように頭を振ると、玄関ポーチへと向かう。
1月の夜はひどく寒くて、吐く息は白い。
少し駆け足で、暖かいマンションへと急いだ。