そのアトリエは溺愛の檻
「雨宮は変な仕事に巻き込まれてるんだって?」

「変というか、来年の販促物のことだけどね」

いくらここが個室だと言え、社外なので具体的なことは口にしないように気をつけて話す。


「仕事相手考えると羨ましいけど。すっごいイケメンだし」

「やめてくださいよ。奥田さん、素敵な旦那様がいるくせにそんなこと言って」

「それは否定しないけど、でもあの人は別次元じゃない?」

「イケメンねぇ。雨宮はもう変な男に捕まるなよ」

「わかってるし。そもそも仕事関係での恋愛はこりごりだから」


二人は私の元彼である今井さんのことを知っている。今井さんは取引先の営業だった。

賢木くんや奥田さんと違って社外に出ることがほとんどない私は来客対応や電話対応をすることが多く、取引先の人と話すこともよくある。今井さんは倉橋の担当ではないけど、担当者の代理でどうしても急ぎの資料を届けてくれたということがきっかけで出会った。

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