そのアトリエは溺愛の檻
「和解してるんですね」

「でもやっぱり実家には帰りづらい。だから弟が気をきかせてくれて。実家から遠くないここにマンション建てるから、買わないかって。俺も息抜きできる自分だけの場所が欲しかったし、地元も好きだったしちょうどよかった」

「じゃあこのマンションのオーナーって」

「そ、弟」


ここから遠くないということはおそらく彼の実家は日本有数の超高級住宅地にあるのだろう。工藤商事の社長なら確かに納得できる。きっと豪邸なんだろうな。

そしてぽんっとデザイナーズマンションを建てちゃう弟さんも恐ろしい。まったく別世界の住人の話にしか思えない。


しかしこの話を聞いていると、全国にあるかもしれないと疑っていた「アトリエ」はここにしかないのかもしれないと思った。ここがあまりに特別すぎる。

これも「アトリエは他にもあるんですか?」と一言聞くだけなのに、どうしてか言葉が出てこない。


聞こうかどうしようか悩んでいると彼がケープを外し「完成」と言った。


「じゃあ話はとりあえずここまでにして、百音は着替えてバルコニーに来て。衣装はそこに用意してるから」
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