そのアトリエは溺愛の檻


その撮影は楽しかった。最初に言われた通り、ライフワークの撮影でなくお遊びの撮影だから、普通に会話をしながらの気楽な撮影だった。景色は見えないけれど、そのおかげで完全なプライベートな空間になっている。デート中に写真を撮ってくれる恋人みたいで、あまりに自然すぎて、本当に勘違いしそうになる。

「百音のストレートな黒髪は俺好みだけど、こういうのも新鮮でいいな。ちゃんとプロのメイクとスタイリストつけて撮影したくなる。でもそれだと独り占めできないし」

隣に座って写真を数枚撮ったあと、彼は私の髪に触れた。


「独り占めって」

「こんな楽しいこと、他のスタッフに教えたくない」

全ての言葉を嬉しく感じてしまう私は重症だ。でも今この空間に二人だけで、これは仕事でもなく、交換条件の撮影でもない。この瞬間だけは自分に素直になってもいいのかもしれない。


「私も楽しいです。とっても。最初モデルって聞いて気が重かったけど、今はこんな楽しい経験をさせてもらって感謝してます。ありがとうございます」

「そんな改まってどうしたの?」
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