明るい不倫
恵子は考えていた。

徹が浮気していることは、知っていた。

けれど、私たちには子供はいない。

これから子供を作る予定もない。

結婚はお互いに勢いもあったかもしれない。

数年前に感じていたような愛情がお互いに消えかけていることも知っていた。

「恵子さん、どうかした?」

「あ、ううん。大丈夫。」

そう言って、夫の顔から傍に立つ、私の愛しい人に目を移した。

夫よりも数センチ背が高くて、優しくて頼りになる人。

「行こうか。」

私は小さくうなづいた。

そして、夫とその可愛い彼女の隣を通り過ぎた。

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