王太子様は、王宮薬師を独占中~この溺愛、媚薬のせいではありません!~



 ある日、国王は第一王子ギルバートを書庫へ呼び出し、内緒話をするつもりでこそこそと問いかけた。


「今は公式な場ではない。本心を言ってみろ、ギルバート。今まで出会った女性の中で気に入った娘はいないのか?」


ギルバートは端正な顔をゆがめて大きなため息をつく。
程よく筋肉のついた体には、フリルがあしらわれた細身のシルエットの貴族服が窮屈そうに見える。国王からの問いかけに、ギルバートは少し伸びた金色の前髪をかき上げ、切れ長の目を不満そうにゆがめた。


「あいにくですが父上。俺には令嬢たちの違いが分かりません。白い肌、つぶらな瞳、美しく化粧を施し、華やかに髪を結う。たしかに美しい。わが国にはこんなに美女がいるのかと感心するほどです。しかし、いくら美しくても、こう何人も束になってこられたら、申し訳ないが全員同じに見えますよ。それにね、彼女たちは俺の言うことになんでも頷くんです。まるっきり自分の意思というものを表さない。つまらないんですよ。興味を惹かれない。意思のない人間が次期王妃としてふさわしいとはとても思えません」

「マクレガー侯爵家の娘は、気品もありたおやかで美しいぞ」

「金髪の女性でしたっけ。たおやかすぎて、声が全然聞こえないのです。何の話をしたかさえ覚えておりません」

「では、キンバリー伯爵家の娘はどうだ。多少気は強そうだが、あの美しさは人を引き付ける」

「人を押しのけて話に入ってきたご令嬢ですかね。我が強すぎて、王妃にはふさわしくないのでは?」


ああ言えばこう言う。
辛抱強く耐えていた国王はついに眉間にしわを寄せ爆発した。


「では誰ならいいのだ!」


国王が苛立ちをあらわにしても、ギルバートに堪えた様子はない。語気荒く肩を怒らせる父親を一瞥し、瞳をきらめかせて滑らかに語った。
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