20代最後の夜は、あなたと
「どこ行く?


今日は暑いから、冷たいのがいいかなー。


伊勢くん、何食べたい?」


わざとテンション高めで言ったら、


「無理すんな」


頭をポンポンたたかれた。


「優しいね、伊勢くんは」


「俺が優しくすんのは、好きな子だけだからな」


私を見下ろしながら、笑っていた。


お店へ向かって歩いている時も、ゴマラー油つけ麺を食べている時も、会社へ戻る時も、いっさい課長の話はしなかった。


ただひたすら、私を楽しませて笑わせてくれる話題ばかりだった。


伊勢くんに甘えればいいじゃん。


そんな気持ちが、私の中でグルグルまわっていた。


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