20代最後の夜は、あなたと
出張の打診をされてからというもの、風邪を引くんじゃないかと寝不足になってみたりしたけど、私は元気いっぱいだった。


新幹線なんて誰が乗っても一緒だから、代わってくれないかと思ってこっそり聞いてみたけど、そんなことしたら道中ずっと霧島課長に怒られるし、ってみんなに断られた。


頼みの伊勢くんにも、


「悪い、その日は終業後に実家へ行かなきゃならないんだ、ごめんな」


と言われた。


奈緒にもさんざん愚痴ったけど、


「帰ってきたらなぐさめてあげるから、日帰りなんだし今回はあきらめなね」


同情してはくれたものの、解決策はなかった。


当日は、朝からひどい雨だった。


日帰りだから特に大きな荷物にはならなかったけど、タオルを多目に持っていった。


どこに住んでるのか知らないけど、霧島課長は早々と乗ったみたいで、東京駅から乗ったらもう窓側の席に座っていた。


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