35階から落ちてきた恋
「どうして俺が果菜をあちこちに連れ歩くのか」

「それはもともと私だって疑問でしたよ。でも、それを聞いたら、普通の男と同じだって、同じ生活がしたいって言ってたじゃないですか。男女限らず友達と気軽に出掛けるような」

「でもさ、よく考えてみろよ。これでも人前に出る仕事をしてるんだよな、俺」

「そんな事知ってますよ。だから初めの頃、私はいろいろ抵抗したじゃないですか」

「果菜は今まで、俺のスキャンダルって聞いたことあったか?週刊誌やテレビ何かの記者やリポーターにに追いかけまわされるような」

「私はそういうのに詳しくないですけど、あったようななかったような?よくわかりません。ただヒロトさんが結婚するときには大騒ぎになったのは知ってます」

「・・・果菜はホントに疎いからな。仕方ねえか」

手にしていたバーボンのグラスをグイっと飲み干すと、視線をカウンターに向けてグラスを軽く持ち上げる仕草をした。
カウンターの向こう側にいるアツシさんが頷くのが見える。

「進藤さん、ピッチ早くないですか?」私のグラスにはまだピンク色をしたカクテルが半分以上ある。

「大丈夫だ。アルコールに強いのは知っているだろう?」
まあ確かに。

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