35階から落ちてきた恋
時間がたつに従ってやはり世間の反応は大きくなっていった。社長や進藤さんにとっては想定内だったことらしく、すぐに進藤さんのコメントを事務所のホームページにのせ、マスコミ各社にもFAX送信した。
ファンクラブのホームページにもファン向けのコメントを出し、ヒロトさんやユウキさんもコメントを出してくれていた。

二人は真剣に交際している。だからどうか冷静に温かく見守って欲しいと。

ただ、私は進藤さんのマンションからは出られない状態になっていた。
マンションの入り口、地下駐車場の出入り口までマスコミやファンの人たちの姿があったからだ。

出勤できず有給休暇を使って休んでいた。
クリニックのスタッフたちに迷惑が掛かっていると思うと気が重い。

週刊誌に載っていたのは私の後ろ姿だったけれど、それまで堂々と二人で出歩いていたのだからあちこちで一般の人たちから隠し撮りがされていて私のことは公然の秘密状態になっていたことを今回初めて知った。そしてこの交際宣言で今度は公になってしまったというわけだ。

私の写真にモザイクや目のところに黒い線が入ったものが出回っている。

「なんだか犯罪者みたいな扱いでイヤ」
ぶうっと頬を膨らませると、進藤さんは困ったように笑った。

「本物はこんなに可愛いのにな。お披露目できないのが残念だ」

「ほんっきでそう思ってます?」

「思ってるよ」私の膨らんだ頬に人差し指を突きさして笑う。

もうっと顔をそむけると、「ごめんな」といつもと違う低い声で返されて驚いて振り向く。



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