35階から落ちてきた恋
それからすぐに進藤さんからラインが来たけど、その返信も清美さんがするという徹底した遮断にもはや笑うしかない。

「貴斗にはちょっとお灸をすえておくから。これくらいで勘弁してあげて。九州から戻ったら貴斗と向き合って話してもらえたら嬉しいな」

清美さんの気持ちが伝わって私は素直に頷いた。

「はい。そうします。清美さんに聞いてもらったら何だか軽くなって前向きになってきました」

「そう。よかった。私は貴斗も大事だけど、果菜ちゃんのこと気に入ってるから果菜ちゃんの暗い顔は見たくなくて」

おつまみのサーモンのジャーキーを咥えて「でもさぁ」と続ける。

「貴斗のさ、アイツの焦った顔とか結構レアだから、私としては見てて小気味良いっていうか。果菜ちゃんもっと振り回してやれって思ってみたり」
クスクスと笑い出している。

えええ。そんな風に見られていたとは。

「頑張って。いろいろ。応援してる」
「ありがとうございます」

「そういえば、果菜ちゃんは人前で歌うの嫌なんだよね?何で?恥ずかしいから?」
「友達と行くカラオケとかも苦手で。もう誰かが聞いてるって時点でダメなんです」

「そっかー。実はねー、あの動画を見たスタッフとかレコード会社が、果菜ちゃんにシンガーとしてオファーしようかなんて言ってたのよ。
前から貴斗にも歌わないかって声かけてたんだけど、あいつ無視してて。でも、もしかして果菜ちゃんと一緒だったら歌うんじゃないかってスタッフが言いだして」

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