35階から落ちてきた恋
「で、もう貴斗と別れたくなった?」

ワイングラスの中のワインをゆらゆらさせながらいたずらっぽい瞳で私に問いかける。

「いいえ。それは全然」

「あら、そこは一本芯が通っているのね」
清美さんは大きく目を見開いた。

「ハイ。だって進藤さんの隣に他のヒトが寄り添ってるところなんて想像しただけで寒気がします。絶対に譲れません」

「あらー、貴斗が聞いたら調子に乗りそうだからそれは教えないでおこっと」

まあ、飲みなさいよと次のワインがグラスに注がれる。

かなりアルコールが回っているせいか気分が高揚してきて楽しくなってきた。

「いただきまーす」

「うん、飲め飲め。いっぱい飲んじゃえ」


ラグの上に空のボトルが何本も転がる頃、私のスマホの震えに気が付いた。

「ん~?何よこんな時間にぃ。どーせ貴斗でしょ。それこっちに貸してっ」
酔っぱらった清美さんの手が伸びてきて私のスマホが取り上げられてしまう。

「もしもし、貴斗?女子会の邪魔するなって言ったでしょ?・・・帰さないから。はぁ?果菜ちゃんはここに泊まるの。迎えに来たって帰さないから、来なくていい。
・・・電話も代わってあげないわよ。果菜ちゃんは明日の仕事もここから行くから。そう、私がクリニックに送るから。あんたは九州の準備してなさいよ。
果菜ちゃんには九州から戻ってから会いなさい。じゃあね」

有無を言わさぬ態度で電話は切られ私は驚いてしまう。

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