35階から落ちてきた恋
初めて見るタイプのイケメンだったな。

エレベーターに乗り込みさっきの男性の顔を思い浮かべる。
平日の夜にスーツでもなくシンプルなのにどこかセンスの光るファッション。
無造作ヘアに色気のある目元のほくろ。

何をしてる人なんだろう、アツシさんとずいぶん親しげだったけど。
アツシさんと同じような職業の人かな?いや、客商売ならもっと愛想がよくないと。
カリスマ美容師とか、飲食店の経営者とか。
ああ見えてIT企業の社長とか。
想像していて笑えてきた。

久しぶりに藤川先生以外のイケメンを見て得した気分。
世の中には藤川先生以外にもたくさんのイケメンが存在している。
この世のどこかには私のことがいいと言ってくれるイケメンがいるかもしれない。


さあ、明日からの仕事も頑張ろう!


ビルの大きなドアから外に出ると、息が白くなるほど澄んだ空気と潔い寒さ。
空を見上げると星も見える。


両手を大きく広げて大きく息を吸って思いっきり吐き出すと身体からアルコールが抜けるような爽快感。


マフラーを巻きなおして私は足取り軽く駅に向かって歩き出した。



< 22 / 198 >

この作品をシェア

pagetop