35階から落ちてきた恋

ルームサービスの食事と一緒に替えのシーツを持ってきてほしいと頼んだ。
もともと進藤さんがトイレに立った隙に変えるつもりでいたから、交換すると言ってくれた客室係の方には丁寧にお断りをした。

軽く食事をしてもらい、また横になってもらう。

「もう1本点滴しておきますね。もうひと眠りして下さい。ちゃんと間に合うように起こしますから」

進藤さんは目を閉じて頷いた。
さっきは軽い冗談を言っていたけれど、まだまだきついのだろう。
点滴を始めるとすぐに寝息に変わった。



それにしても。

何てフェロモンだだ漏れの人なんだろう。
こうしてると見ていると自分の職務を忘れそうになる。

綺麗な顔。
この目元のほくろ。
長い指としっかりと筋肉の付いた身体。

昨夜は進藤さんの調子が悪くてそんな風に考えている暇はなかったからよかったけれど。
まさか、この人の胸に抱かれて目覚めるとは思ってなかった。
思い出しては顔が熱くなる。


あれから事情を説明して木田川さんの誤解も解けて良かったけれど、
「まあLARGOはアイドルじゃないですし、ヒロトも結婚してますから恋愛は自由ですけど、そういう事は元気になってからでお願いしますね」
と笑顔で言われてしまったのはどうなんだろう。
完全に誤解が解けたわけじゃないってことなのか。

いかんいかん、仕事、仕事。

沢山の待っている人のためにこの人を今日のライブに送り出さなきゃ!
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